image「Silvery Cross」 ©Ray


 夢を見ました。
 そう。
 夢という名の悲しい響きを持った感情を・・・わたしは、知りました。
 なぜ、それをわたしは現実でなく夢という世界で知ったのでしょうか・・・
 それは、わたし自身も知らないこと。

 なぜ。
 多分。
 おそらく・・・
 それは、わたしが本気で人を好きになれないから・・・
 自分自身の他の人間を好きになれないから。
 今までだれも大切じゃなかったから。
 わたしは、他のだれかを愛しいと感じたことがないから。
 だから。
 それを、夢で知った。

 大切なのだと。
 貴方自身をわたしよりも一番大事な存在なのだと、夢の中で知った。
──────わたしは・・・
 恋を、そして。
 愛という感情を知ったのです。

 
 貴方を愛しい。
 貴方を想うだけで、この心は激しく揺れて・・・狂おしい。
 なぜ?
 なぜ・・・?
 どうして?
 こんなにも、わたしは悲しくてならない?

 そう。
 分かっている。
 これが全て夢の中での出来事だから。
 夢から覚めて一番最初に感じるものは、何よりも深い悲しみ。
 これが──────全て、夢。
 現実ではないこと。
 わたしにとってそれが切なく、つらい。

 
 なぜ。
 どうして、貴方は現実に居ない・・・?

 なぜ、どうして・・・貴方は夢の中でしか会えない・・・?

 わたしは───────
 

 現実の世界でも貴方に会いたい。
 貴方に恋したい。

 それなのに。
 それなのに・・・貴方は─────


 夢とも現実ともおぼつかない狭間で、今宵もまたわたしはあの人に出会う。
 名も知らない貴方。
 わたしは、この想いを夢と現の世界に抱きしめながら。
 吐息をはらむ。
「これは─────切愛」
 貴方の腕に抱かれながらもらす笑みと共に、わたしは小さく呟いた。


©2005 KOEI/ 鏡ユイノ






拙宅三周年記念のお祝いに、と個人的に頂戴いたしました。
ユイノさんは、多忙プラス御本人のサイトも近々四周年…という頃でしたので、まさかお祝いを戴けるとは髪一筋ほども思っておりませんでしたし、むしろご自宅の記念作に励んでいらっしゃる頃ねv なんて勝手に思っていた位なので、受取った際には、これでもか…と言う位、正に鳩が豆鉄砲をくらったような有様でした。

それだけでなく、内容も。
誰も好きになったことのない「アンジェリーク」、と言うことで貰い受けましたが、オリジナルとしても楽しめそうですし、解釈の幅を持たせたものって、ついついアレコレ考えて、その世界観にドップリ浸かってしまいますね。
夢というモチーフ、相手そのもの以上に恋という想いに問答しているアンジェにも、私は共感を深く深く覚えます。
同調しやすくて。こう言った空気感。
さすがと申しますか。なんだか私、ユイノさんに見透かされている!?とは思わずにいられない、不思議な感覚で楽しめました。
素敵なお祝いに本当に感謝です。



  










題字/背景:咲維亜作