決戦の日




「好きです」
 どうしたら、分かってくれるかしら。
「大好きです」
 一体、どんな言葉で告げたら。
 貴方は、分かってくれる?
 それとも、この想いと一緒に……
 わたしをあげたら良いのかしら?
「……でも、それって」
 やっぱり、自信ないわ。
 だって、相手は……わたしの先生。
 それも、天下の氷室先生ですもの。
 常識で考えても、それは……かなりまずくありません?
 なので、かなり定番かも知れないけれど。
 わたしなりによく考えて。
 これを用意しました。
 えっ? 何かって? 
「それは、手作りのチョコレート」
 これでも、家庭科は普通の人よりも成績が良いって自負している方。
 だからこそ、手抜きなんて言葉は使いません。
「なるべく、甘くないものをと考えたつもりよ」
 だって。
 多分、先生は甘党の方じゃないと思うの。
 少し苦味のあるビターに、中には少しだけお酒を入れて……
 自分でも、かなりの自信作よ。
 一応、試作品のひとつを我が弟である尽に食させたら、OKマークをもらえたから。
 でも、尽はまだ未成年なので。この場合、お酒は抜いたものを食してもらったわ。
「すっごく美味く出来てる!!」
 って、尽は言ってくれたの。
 これなら、大丈夫とも言ってくれたけれど……
 でも、不安。
「だって、相手は天下の氷室先生よ」
 ちゃんと受け取ってくれるかしら?
 多分。
 職員室の職員で均等に分けるって言い出すと思うから。
 わたしは、考えたわ。
「なら、先生の帰宅時を狙えば良いのよ」
 一歩、学校を出てしまえば。それは、職員室の扉を叩くことはないから。
 でも、やっぱり不安。
 本当に、上手く行くかしら?
「だって、相手は……鈍感な氷室先生」
 わたしの気持ちに全然気づいていないくらい。
「この恋って、成就するのかしら?」
 わたしは、ほうっとため息をひとつ吐いた。
 でも、やらなきゃ。
 彼が好きなの。
 だれよりも。
 わたしの中で、憧れとかの感情ではなく。
 たったひとつの恋愛として、彼を見つめているから。
 だから、大切なの。
 彼自身が。
 わたしの秘めた想いの全てが。
 

 知って欲しいの。
 貴方に。
 わたしの想いを。
 貴方が好きだと言うことを。
 憧れなんてものじゃないことを。


 だから。
 お願い。
 今日の日を……
 認めて欲しいの。
 わたしの全てを受け止めて欲しい。


 さあ。
 勇気を出して!



2004©KONAMI/ 鏡ユイノ






2004年バレンタインフリー創作を頂戴してまいりました。

相手が先生というのは、本当に大変なもの。
生徒だからって、中々相手にされないと言うか、立場上躊躇されると言うか。
だからこそ巡る、色々な思考。
憧れと好きは大きな違い。
そんな感じで共感を覚える点が幾つか。
あぁ……自分も女の子なんだな、と感じさせられた瞬間でもありました。
それにしても、先生相手に「わたしをあげる」という爆弾発言を一番最初に出してくる辺り、良い味出してます♪主人公ちゃん。



  























背景/挿画:咲維亜作