まどろみ(友雅×あかね)




そっと目を開けると、すぐ近くに端正な貌がある。
目が覚めてもこのぬくもりが心地よくてこの腕から抜け出せない。
あなたは知らないだけ。
私がどんなにあなたを想っているか。
本当はこの腕を一時だって離したくはないの。
だからあなたが目覚める前のこの時間が一番好き。
あなたは私だけのものだから。

「友雅さん…」

そっと名を呼んでみる。
ずっと、そばにいて欲しい。
その瞳で私だけを見つめて欲しい。
そっと頬に手を伸ばすと瞳がゆっくりと開かれる。
気怠げなその表情は、ぞっとするほど艶やかで。
見つめられただけで、動けなくなる。

言葉もなく見つめるあかねを友雅は己の胸に抱きよせる。
「まだ眠っておいで…」
その甘い声。
やさしく髪を撫でる指。
なんて甘美な誘惑。
「友雅さん、大好き…」
あかねは甘えるように友雅の腕に抱きついた。
唇に落ちてくる、ぬくもり。
緩く背にまわされた腕。
この腕にずっと捕らわれていたい。
外からやわらかい光が射し込んでくる。
あかねはそれに逆らうように友雅の胸に顔を埋めた。

ねぇ、友雅さん?
いつもは言えないけれど。
あなたを想っているのは本当。
約束したでしょう?
私はあなただけのものだって。
だから私の手を離さないで。

あなたが、好き…

2003©水野十子/白泉社/KOEI/ 響咲夜






フリー配布されていた作品を頂戴してまいりました。

ふと目覚めた時に、大切な人が身近にいる安心感。
そんな些細なようで、何物にも変えがたい幸せな満ち足りた空間。
短い中にも深い語りかけを感じられるこの作品が好きです。



 







背景:『ぐらん・ふくや・かふぇ』さま